2008年04月28日

健康保険

昨日は山口の補選で民主党の平岡さんが勝利しました。民主党は、年金・ガソリン税・後期高齢者医療制度の3点セットで戦い、中でも今月15日に天引きが始まった後期高齢者医療制度が民主党の勝利を決定的なものにしたと報道されています。実際、選挙というのはそうした大きなアジェンダだけで決まるものではないのですが、与党へのたいへんな逆風になったことは間違いないでしょう。

もはや完全に悪者扱いとなっている後期(長寿)高齢者医療制度。4月になったとたんマスコミがバッシングを始めました。この制度自体は批判されて当然だと思いますが、その批判するマスコミのポイントがあまりにずれていたように思います。最近では、この制度についてようやく冷静な議論がされはじめてきたという印象があります。

日本の健康保険制度を考える上で大きなポイントになるのは、

1.超高齢化で増え続ける医療費をどう抑えるのか
2.増え続ける医療費を誰が負担するのか

ということです。

まず1についてですが、政府与党はメタボ検診や療養ベットの削減、75歳以上のかかりつけ医などを導入し、なんとか抑制したいと考えています。事実、厚労省は「医療費適正化に関する施策についての基本的な方針」を打ち出しています。厚労省は2006年の医療費33.1兆円は2025年までに48兆円まで増えると試算しています。

一方の野党側は、日本の医療費は対GDP比で考えるとOECD加盟国のなかでも低いほうなのだから、医療費の増進を抑えようとすること自体が間違いだと主張しています。確かに2005年のOECDの統計を見ると日本は30カ国中21位の8.0%です。日本の高齢化率を考えると極めて低水準の医療費といえます。

次に2についてですが、政府与党は世代間、地域間における負担の格差を是正しようと考えいます。たとえば1人当たりの医療費は、75歳以上の人は現役世代に比べ5倍になっています。また、高齢者が多く加入する国民健康保険では市町村の財務状況により保険料が異なっておりその差は約5倍です。そこで、後期高齢者制度を導入し、75歳以上に人にかかる医療費のうち5割を国費、4割を現役世代、1割を75歳以上に負担することになりました。また、これまで市町村が運営していた国保の一部を都道府県単位にすることで保険料の地域格差を2倍まで抑えるようにしました。

これに対し野党側は、高齢者に負担をさせることに反対しており、国費のさらなる投入を求めています。道路特定財源や天下りの見直しなど無駄遣いをやめて医療費に回せということです。

要するに与党と野党の間には基本的なスタンスが全く異なるので、後期高齢者制度の見直しはそう簡単にはできないでしょう。

私はどちらの言い分にも理があると思っています。

まず1ですが医療費を無理に抑え込む政府の方針は間違ってると思います。診療報酬の改定で地域医療が崩壊寸前になったことは記憶に新しいでしょう。また、療養ベットの削減などは医療難民を生むとも言われ、無理に入院日数を減らして医療費を削減することは危険です。まずは多様な患者の受け皿や保健指導の充実を計って、国民が健康を保つことを考えるべきです。結果、運が良ければ医療費が減ることもあるかもしれません。

先日、生活保護受給者に対してはジェネリック医薬品を処方するようにというお達しが厚労省からでていたという話がありましたが、これは患者の決定権を奪う差別的な内容です。医療費を抑え込むことを第一に考えると、本当に必要な医療を受けられなくなるなど必ず患者にしわ寄せがでてきます。「医療費が増大しないように」、「医療費を下げる」という文言は基本方針から削除するべきでしょう。

次に2ですが、2025年までに25兆円も増える医療費をどう負担するのかというのは、税制、保険制度に関わる非常に大きな課題です。本当に25兆円も増えるのか怪しい面もあります。しかし、ほかに数字がないので25兆円とします。

日本の一般会計予算が83兆円でそのうち25兆円を国債で賄っています。他に特別会計というものがあってこれは368兆円もあります。今後増える25兆円の医療費をこの会計から捻出できるのかどうか。これは誰にもわかりません。ただ、野党が主張するように無駄をそぎ落とすことは可能でしょう。しかし、政府債務が1100兆円超という中で、25兆円を賄うのは至難の業と言わざるえません。

要するに、大前提として予算の無駄を省くのは当然としても、政府与党の言う「公平な負担」を無視することはできません。

ではどうすればいいのか。消費税を上げるのか、保険料を上げるのか、若者が負担するのか、お年寄りが負担するのか。

個人的には欧州的な高負担高福祉で、窓口負担の軽減化を志向してるのですが、何しろ新しい医療制度の設計図を考える上での必要な資料がまったくない状況では、すべてが机上の空論です。

まずは、国の予算にどれだけ無駄があるのか与野党が協力して示していただきたいものです。国民的な議論ができる下地を政治責任で作っていただきたいと思います。
posted by 鈴木友音 at 14:08| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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